トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅軟な床に対してB&W801をどう活かすべきか

軟な床に対してB&W801をどう活かすべきか



 軟な床に御影石とスパイク


 電話でご相談頂いた内容からしますと、倉庫の二階部分をオーディオルームに使っておられる関係上、床の弱さが音を作る上で妨げになっているようです。巷では「軟な床には御影石を!」が一つの成功手法のように思われています。

 十数年前までは私もお客様に勧めた事がありますので、誰もがそう思う一面を持っているのは仕方ありません。入れて直ぐは特効薬のように効き目絶大に感じますが、その副作用の大きさも半端ではありません。

 スピーカーの発した音楽振動エネルギーを一手に引き受け、御影石は一人で頑張ろうとします。全ての振動を受け止めるまでは良いのですが、硬いがゆえに跳ね返してしまいます。

 その跳ね返り振動が次から次にやってくる音楽振動をどんどんと襲い、怪我人、死人が続出してしまうのです。


 ”受けてはいなす”、”受けては流す”


 音楽振動に限っては”一人の負傷者も死人も出ては困る”のです。

 ”受けてはいなす”、”受けては流す”で有るべきです。

 それがあろうことか、今回に限ってはアンカーべースと呼ばれるアルミ製アングルに、スパイクが付いた台をそのまま御影石に乗せてセッティングしてあるのです。

 セッティング中に誤って手でも挟んだら突き抜けてしまいます。考えただけでゾッとするようなシーンであります。

 そんな足場で作り出す音といえば、

 削ぎ落とされた低音・・・・字が違いました。

 殺ぎ落とされた低音・・・・こちらが正しいです。

 耳に刺すようなキツイ高音

 こんなイメージですが分って頂けますか?。


 予算内で何をどうしたら良いか?


 J.MさんはサウンドステーションとB&W専用インシュレーターを通販で希望されたのですが、重症のようですから「片方の予算をクリニックとセッティングにまわした方が良いですよ」と助言させて頂きました。従いまして、本当は両者同時に出来たらよかったのですが、予算の都合上サウンドステーションは次回に見送りです。

 ローゼンクランツのインシュレーターが如何に優秀と言えども、この軟な床でどれだけの効果を発揮してくれるのか?ちょっと心配な面もありました。

 スピーカーの周りの床を足でドンドンと踏んで強度の確認をしますと、今置かれている場所は丁度固いところと軟なところにまたがって置かれている事が判明しました。


 申し分ない電源供給にもかかわらず、”抜けの悪い音”


 マイルスの”リラクシン”を聞かせてくれたのですが、ペットの音が全く抜けて来ません。アンプ等の鳴り方のバランスは悪くはないのに・・・?。そして、電源コンディショナーにはローゼンクランツの極太電源ケーブルが全ての機器に繋がっています。

 そして、部屋のあちこちに何百万というアンプや幾つもの機器が使われないで無造作に置いてあるのです。不思議に思って尋ねたところ、ある人の家が建築中の間預かるのと同時に借して貰っているのだそうです。

 どう見てもJ.Mさんは30代前半なのに、「何故?高価な機材がこんな形で・・・」と不思議に思っていた疑問が解けました。


 それにしても、これだけのケーブル(AC-3EX)が繋がれていて、こんなに抜けの悪い音は過去のデーターからして有り得ません。息子も私も初めて耳にする音です。


 音を悪くしている原因の特定に注力


 御影石によって跳ね返された短く速い振動と、床の硬軟両エリアにまたいだ設置による、大きく煽られる波によって生じる不協和音が正体だと結論付けしました。

 似通った現象は、車の乗り心地にも見受けられます。座った瞬間はソファーのようにふわふわとして気持ち良く感じるシートの車がありますが、出来の悪い足回りと一緒になった日には子供は悪酔いしますし、腰痛持ちにとっては地獄です。


 最悪の先には明かりが見えます


 しかし、私が聴いたそんな音でさえ、J.Mさんにとっては、『このACケーブルを繋いで初めて光明が見えたので、カイザーさんにクリニックの要請をしたのです』と打ち明けて下さいました。これで良い方だとは、それ以前の音たるやどんな音だったのか?想像するのさえ困難です。

 何故なら、今回J.Mさんに向けて発した私の最初の言葉が、「今までクリニックしたシステムの中で最悪の音です」だったのです。後になって考えてみれば、あまりにも失礼な言葉であったと反省しております。しかし、その言葉の裏には「今までで最高に変身した音に出会えますよ!」という”期待して欲しい”と意味でもあったのです。


 クリニックには問題解決力が要求されます


 原因の主たる部分が特定出来たことによって、何とかスピーカーの設置場所の方針が決まりました。このようにクリニックに伺う度に、常に新しい問題を突きつけられます。

 そして、その都度、その場で、常に、結果を求められる立場にありますオーディオクリニックの仕事は、決定力不足に悩む日本サッカーのフォワード陣のようでは許されないのです。


 アンカーベースをスピーカーから外し、純正のローリングキャスターをローゼンクランツのインシュレーターに変更。それらを適材適所に配置した上で加速度組み立てします。


 御影石の移動に一苦労


 100キロを越える御影石のベースはカーペットに喰い付くので、男3人が掛け声と共に必死に押しても10センチ動かすのが精一杯です。やっとの思いで音に影響の少ない部屋の隅に移動しました。


 亀甲縛りを解かれたかのように、また、水を得た魚のように、スピーカーは生き生きとしてきました。長い間の苦しい思いはきれいさっぱり忘れて、新しいスタートを切れる喜びを噛みしめているようにも感じて取れる音です。


 ローゼンクランツ製インシュレーターの高性能さをもってしても、この軟な床でどれだけ良い音で鳴ってくれるのか?ちょっと心配でもありましたが、それも杞憂に終わりそうです。

 順調に行きそうな感じなので、ちょっと一服も兼ねて、コーヒーブレイクです。音楽をかけながらこのまま10分ほど振動が落ち着くのを待つことにします。


 エボニー製フェーズプラグの装着


 次に打った手は801との相性が特に優れたセレクテッドタイプのフェーズプラグの装着です。オリジナルのプラスチック製の音が如何に貧弱であったか、楽器が持つ本来の魅力的な響きがするようになりました。


 真鍮製鋳物コンセントプレート


 更に音をぐっと引き上げたのは意外にも壁コンセントプレートでした。これは真鍮鋳物です。石膏ボードの何ともそっけない音から金属楽器の生み出すブリリアントな音がハートを揺さぶるまでになりました。 


 コンセントの中央部を厚みのある鋳物プレートに引っ張り込むような形で締め付けるので、壁一面にその音色が乗り移り好影響をもたらすものと思います。

 このコンセントは\8,400でカイザーサウンドで販売しておりますので、ご希望の方はお気軽にご注文下さい。テストとして少量仕入れたばかりですのでウェブには未だ紹介していません。


 インシュレーターの真打/PB-BIGU


 予算の枠の中で音のバランスを決めなければならない難しさも、いつもついて回る問題の一つです。ほんの少しオーバーしてしまうのは分った上でDAコンバーターに入れてみました。


 これで今日のセッティングに終止符が打てたと確信するかのような一手でした。かけるディスクからは圧倒的な情報量が引き出され、全く同じシステムとは誰が聴いても思えないほど別次元の音になりました。

 これに気を良くしたJ.Mさんはもう既に次のプランを次から次に相談を持ち掛けて来ます。電源ケーブルは近い内に借りている人に戻さなければなりません。

 どこから手をつけるべきか・・・。

 どのグレードのケーブルにしたら良いのか・・・。

 予算を幾ら用意しなければならないのか・・・。

 嬉しい悩みは尽きる事がないようです。


← Back     Next →